妖怪の子預かります / 廣嶋玲子
私がまだ小学生の頃。
妖怪といえばゲゲゲの鬼太郎に出ている、見るもおぞましい不気味な存在でした。
こういった部類の書籍に出会うまでは、妖怪はとても怖いものという印象があり、妖怪が出てくる小説を初めて読んだときには「ホラー小説に違いない。」とビクビクしながらページを開いた記憶があります。
読み進めるにつれて自分の価値観が崩れていくのを感じ、それ以降愛すべき妖怪達のお話は私の中では好きなジャンルの一つになっております。
この小説も人間と妖怪達との心温まるお話です。
江戸時代。盲目といえばあんま。あんまといえば美形と相場は決まっております。
おせっかい焼きの長屋のおかみさん達ですら避けるこの男(千弥)と一緒にいるのはしゃべらずの少年(弥助)。
なぜ千弥は見えなくなったのか、なぜ弥助はしゃべらないのかなど、ラストでつまびらかにされますのでお楽しみを。
私は小学3年生くらいをイメージしながら読みましたが、挿絵から類推するともう1~2歳下の年齢かもしれません。
この少年、弥助がついうっかり石を蹴飛ばしたことから、妖怪との交わりが始まります。
預かるのはタイトルにもなっている妖怪の子。
人間の子供でも預かるとなったら大変なのに、相手は妖怪の子供ですから無事に済むわけがない。
さまざまな事件が起こりますが、弥助の強い気持ちと、彼らを取り巻く仲間の力でピンチを乗り越えていきます。
あとがきにも記載ありましたが、作者オリジナルの妖怪はとても良かったと思います。
作者も無類の妖怪好きなんだなということがとても良くわかります。
私の一番のお気に入りは中盤に登場するおしゃべりの元人間ですかね。
彼の風貌や話し方が目に浮かんできそうです。
私がもし何かの妖怪になれるとしたら。
自分が失敗したことを軸にして、人間を戒める存在となるか、自分が好きなことを軸にして、一緒に大騒ぎする存在となるか。
これは非常に大きな問題だと思います。
女好きの色男は、千弥と男色方面に行ってしまうのかと思いましたよ。
弥助も嫉妬していましたから、「すわ。こ、これは男同士の3角関係か!?」なんてよからぬ妄想まで。
作中ではしっかりと否定されていますが、これはかなり怪しいと見ています。
妖怪界のイケメンも良いですね。
彼はツンデレ(って最近は言わないのですかね?)になると思いますが、
今後も活躍してくれそうです。
千弥との確執も一応は和解という形にはなりましたが、いつ再燃してもおかしくない状況です。
妖怪を含めたたくさんのキャラクターのお互いの守備範囲が明確で内容もとてもわかりやすかったです。
うれしいことに、この小説はシリーズ化されているみたいですね。
これはぜひ続きを見てみたい。
手に取ってみて損はない1冊だと思います。オススメします。