いもじろうの読書ログ

人生最高の一冊が見つかるまで

耳そぎ饅頭 / 町田 康

 

耳そぎ饅頭 (講談社文庫)

耳そぎ饅頭 (講談社文庫)

 

 

興味を惹かれたこのタイトル。

 

耳そぎから琵琶弾き、饅頭からは饅頭怖いの話を連想し、人間を恐怖の洞穴に閉じ込める小説かと思っておりました。

 

え?パンク歌手のエッセイ?

 

パンク歌手と物書きのイメージがまったく重ならないのですが、その違和感がそのまま文章になったようなこの書きっぷり。

 

言葉の使い方、テンポ、これは癖になる。すばらしい才能です。

 

私が10回生まれ変わっても決してひねり出せそうにないこの文章。表現。
いや、さすがに10回くらい生まれ変われれば1回くらいは挑戦してもいいかな。

 

とにかくCDが売れない。町田氏はCDを売りたいんです。

 

だって、歌手ですもの。歌が売れなくても歌手は名乗れますが、できればさくっとCDを売って、カラオケなんかでガンガン歌われて家で寝ていても印税が入ってきて生活ができるのが最高じゃないですか。

 

でも売れない。支払われた印税の内訳を見て2~3日落ち込むほど売れない。

 

「お前らに聞かせる歌なんかね~ぜ!」と言うのがパンクロックですから、パンク歌手としては、CDを買ってくれとはとても言えない。

 

「お前らオレの音楽なんて聴くなよ!」と言いながら本当は聞いて欲しい。

パンクロックと言うのは何て哲学的な音楽なんでしょう。

 

町田氏は家でじっとしているのが好きと言いながら、CDが売れないので仕方がないから引きこもりの自分を変えようと外に出る。


外出先で実にいろいろな経験をします。
その出来事を面白おかしく、パンクロックっぽくまとまっているのがこの1冊です。

 

「ついこないだまでサルだったアホ面したお前らなんか嫌いだ。みんな死んじまえ。」と言いながら、みんな大好きだといっているのです。

 

私は町田氏の小説だけでなく、音楽もぜひ聴いてみたいと思っています。

聴くけど買わない、絶対に買わない。

 

だって、CDが売れないと悩む町田氏のエッセイのほうが面白いから。売れすぎて困りましたなんてエッセイは存在する価値がない。

 


町田氏の世界にどっぷりとつかりたい人はオススメします。この小説、読むとかなり体力を消耗します。

 

さらに自分の書く文章に影響が出ることは間違いありません。

 

それにしても、こんな作家がいるのか。そしてこんな文章もありなのか。

 

町田氏は小説を書くときはどんな感じで書いているのだろうか。パンクな気持ちで書いているのかはたまたその逆の様相なのか。

 

上を向いてツバを吐く。自分の顔にかかるギリギリのところでかわす。

そんな毎日。

 

私のパンクロック風の文章は、これが精一杯。オレもお前も愛すべきバカ野郎だ。