月と蟹 / 道尾秀介
残酷なお話だと思います。
主人公となるのが小さな子供ということもあって、その残酷さがより一層強まっています。最初はしろばんばのようなほっこりする話かと思っていたので足をすくわれた思いでした。
最後まで本当にドキドキしながら読むことができました。主人公はたぶん小学の高学年だと思います。
もっと上の年齢にしちゃうとただの変質者になってしまいますね。狂った友情・・・いや友情ではないなぁ。助け合い?隣人?友達?一言で言えばそんな内容でした。
ヤドカリが何匹も殺されるんですけど、最初はその残酷さに目をそむけたくなったのですが、読んでいくうちにそれが儀式のように思えてきました。
蛍川の蟹を思い出します。その影響もあってタイトルに蟹がついているのかもしれません。
ヤドカリはいけにえですね。いけにえってどうでもよいものをささげてもダメなんですよね。何日も放置したにも関わらず生き残った特別なもの・・・。
ものがたりの終盤には次の儀式はいつなんだろうと待ち望んでしまうような展開でした。
主人公が心の中の黒い塊を少しずつふくらまして行く様子もすごく良く伝わってきました。おすすめしたい作品です。