顔なし子 / 高田侑
まだ子供だった頃、祖父がわがままをいう私に向かってこういいました。「"おーおんし"がさらいに来るぞ」
近所の喜助さんがトイレに行っている間に後ろから口をふさがれて連れて行かれたという実話も添えられそれから数日間はトイレに行くのがものすごく怖かった記憶があります。
「顔なし」も「おーおんし」と同じです。話だけだと、おーおんしよりも不気味です。
物語の初めにそのお話が紹介されており、これがこの小説のテーマとなっています。
続いて中身ですが、ざっくりと分けると2つの時代が描かれています。
前半は我々の両親が子供だった頃の話。後半は我々が生まれてきた頃でしょうか。
前半はどちらかというと悲しくむごたらしいお話です。
山口連続放火殺人事件(山口県周南市金峰)に至った理由の一つにいじめがあるのではないかと言われていますが、それを思い出すような内容でした。
後半は事故や殺人などサスペンス的な要素が含まれます。
こちらは犯人らしい人が特定されているものの、結局その人は犯人でないという鉄板の内容です。
最後はハッピーエンド・・・とは言えないかもしれませんが、各々が本来あるべきところに収まった。そんな印象を受けました。
読み応えもあり満足の一冊です。おすすめです。