地図にない谷 / 藤本泉
時代は明治~対象あたりでしょうか。とある地域の住人が「いきなり病」という病で突然に死んでしまう。
その原因を突き止めようと若い男女(多江とモン)が奮闘し、つらい真実と立ち向かうというお話です。
特定の地域のみ発症するということで、日本固有の風土病を解決するお話かと思って読み始めたのですが、途中から何やら風向きが変わってきます。
田舎特有の狭い世界観、見栄や体裁、人間のエゴなど、若い多江には耐え難いことが次々に明らかになっていきます。同時に若い彼女に生まれる、どうしてもこの人と一緒にいたいという思い。
いくら小説でも、あれだけの事実を20かそこらの女性が受け止められるとは思えません。自ら命を絶とうとするのは自然な流れだったと思います。
モンが助けるのか、旅先で親友に偶然出会うなどいろいろと候補を考えたのですが、静野ですか。
彼女は多江を殺そうとしたのでしょう。面白いことに、殺されそうになることで多江は生き残る道を選んだわけです。
この時点で、静江の運命は決まりました。最後のシーンは不謹慎ですがきれいだなと思いました。若い男女であれば純粋で、母親ほどの年齢の男女であれば不純であるなんて誰が決めたのでしょうか。
多江の「これでおわり」という言葉も印象的です。
すべてが明るみになり、過去から延々と続いてきた呪いをやっと断ち切ることができた。幸せな気持ちというよりかは、肩の荷が下りたという思いのほうが強かったと思います。
今の日本にも、まだこんな地域は残っているのでしょうか。
自分の頭の中でずっと映画が流れているような気持ちで読み終えた1冊となりました。
やっぱり本はいいですね。