異邦人(いりびと) / 原田マハ
カフーを待ちわびてを読んで、とても素敵な景色を描く作家さんだなと思っておりました。
今回は日本の美の象徴とも言える京都が舞台です。
さらにさらに、画家と画商も出てきて、どうやら超がつくほどのお金持ちの話らしい。登場人物はみんなきれいな服を着て、美男美女の上、美的センスも抜群。
あらら、これは私の日々の生活とはかけ離れ、どうにもこうにも入り込めない世界の話だなと思ってしまいました。
しかし、視点は読者が第3者。
つまり、私たちはTVを見ている感覚で小説を読んでいるというわけです。
この視点だと全体が見えてよいですね。登場人物の一人になったつもりで読むほうが好きなのですが、これですと客観的に物語を楽しむ事ができました。
火曜サスペンスで取り扱うようなそんなストーリーですね。
お金持ちで優れた審美眼を持つ菜穂(なほ)、そして謎の天才画家、白根樹(しらねたつる)。
金持ちで権力のある人ほど下半身がだらしないというのが定番ですが、ご他聞に漏れずこちらもだらしない男達のせいで彼女達が振り回されます。
登場人物たちの、見栄、プライド、嫉妬、出世欲、愛憎などが複雑に絡みあいながらストーリーは進んでいきます。
これほど複雑なのに、読み進めるのに苦労はしません。最後は二人の女性が自分達の足でしっかりと立つでよいのかな。
復讐というよりかは、落ち着くべきところに落ち着いたと受け止めました。
タイトルも特徴的です。
異邦人(いほうじん)といえば、ちょっと古いのですがなんとなく物悲しいあの歌を思い出します。ですが、こちらは同じ字をあてて異邦人(いりびと)と読ませます。
外部から入った人という意味で、入り人(いりびと)ということなんだろうかなと勝手に考えています。
菜穂と樹と、生まれたばかりの菜樹(なつき)がいりびとなのか。
それとも、彼女達の間に割って入ろうとした多くの人物のことを指しているのか。
最後の1ページまで、しっかりと楽しめた1冊です。
久しぶりにしっかりとした小説を読みました。いいですね。