お家賃ですけど/能町みね子
エッセイを読むのはとても久しぶりです。
過去に何冊か挑戦したことがあるのですが、他人の日常生活を見て何が面白いのか?人の考えよりかは、自分の人生のほうが興味あるわと思って遠ざけていたのですが、何となく目に留まってしまいました。
どんな作家にも、独特のテンポがありますが、この人のテンポは私好きです。
読んでいて全くストレスを感じない。文章の長さも区切りもちょうどよい。
「ものすごく趣のある昭和のアパート?古民家?で暮らしました」という作品だと思い、心地よいリズムに任せて気分よく読み進めていたのですが、冒頭のカミングアウトで本の印象がガラリと変わります。
彼女(…でいいですよね)の文章の裏側には、きっといろいろな深い思いがあるんだろうなぁ。
自分自身に気づき、生まれ変わる過程で加寿子荘に出会ったのはやっぱり運命だと思います。
急激に変わる自分自身をしっかりとつなぎとめるためにも、ずっと変わらないものにつながれていたいと思う。
彼女は今もあそこに住んでいるのでしょうかね。
そんなことはみじんも書かれておりませんが、あれは失恋だと思いますよ。失恋でなければ彼からの卒業ですよ。
絶妙な距離でつながっていたのに、彼も彼女も少しずつ変わっていき、気が付くと手が届かなくなってしまった。
私は読んでいてとても切なくなったのですが、ご本人は意外とあっさりしていたのでしょうか。
Gの話やバランス釜の話。時折入っている写真もいいですね。
この人の作品、もう少し挑戦してみようかな。